行間を読む

男同士の言葉に出来ない何か

ポイズンドーターホーリーマザー

※ネタバレあり

全体として母親と娘のはなしであり、当事者と他者のはなしでもありました。
湊かなえさんの作品は、本当にありふれた人間のどろどろとした部分を書くのが上手い。フィクションでありながら、登場人物はしっかりと現実味があるのが堪らなく好きです。


「マイディアレスト」
姉には厳しく、妹には甘い母親のはなし。姉は、母親の言いつけ通り生きているのに誉められるのは何故か妹。挙げ句の果てに変人扱い。こりゃ、やってられないですよ。頭おかしくなりますわ。
ただ、姉の何かがキレる瞬間がカッとなってやってしまった感が伝わって最高でした。
そしてあくまでも、妹を殺してしまった行為は蚤取りであるというのが堪らなく好きです。 
やべぇ~~~最高!!!


「ベストフレンド」
最優秀賞を受賞した薫子に対する涼香の嫉妬がヒシヒシと伝わってきました。格下に見ていた人間に追い越されたときの憎悪は誰しも一度は抱いたことのある感情ではないかと思います。
涼香と薫子の関係を悪い方にミスリードしたあと、薫子を刺したのは涼香ではなくもう一人の優秀賞受賞者と知ったときは「あ~~~」ってなりました。
何より、涼香の最後のブログに書かれていたことが良かったです。
友情は人それぞれ。
もし、生きていたら2人は本当に親友になれたのではないかと思うと残念でなりません。


「罪深い女」
最初は主人公が通り魔をした犯人をその気にさせてしまったという展開かと思ったら、そうではなく親切にすることが相手にとって良いこととは限らないの典型でした。
主人公はめちゃくちゃ自分に酔っているし、主人公の母親はマジモンのやばい人で「ひぇ~~」ってなりました。
途中まで、主人公に同情していたのに…。この母親に、この娘ありって感じです。
自分しか見えていない人は、本当に何も気づけないんだなと思いました。
幸せちゃ、幸せなんでしょうね。


「優しい人」
こっちの主人公の方が、「罪深い女」なんじゃないのかと思ってしまいました。
自分の意志を押し殺していると「優しい人」と思われ、面倒な人を寄せ付ける。私は、主人公にめちゃくちゃ同情しましたけどこの場合、自分の意思表示をはっきりとしてこなかった主人公にも責任はあるのかと思ってしまう…。
でも、ストーカー男は本当に無理だ~~。
続きはないけれど、主人公が救われるといいなと思います。
主人公は人に興味がない故に「優しい人」と言われ、ストーカー男は誰も本気で関わろうとする人がいなかった故に当たり障りのない評価としての「いい人」と言われていたと思うと最高に皮肉が効いているなと思いました。


「ポイズンドーター」
ホーリーマザー」
この2つは対になっていて、娘から見た母親と他者から見た母親というはなしなんですが最悪としか言えなかったです。
後味悪すぎる…。
娘から見た母親は確かに嫌な人間で、一緒にいたら参っちゃうなという印象。他者から見た母親は聖母で、決して「毒親」ではないという印象。
これ「ホーリーマザー」が後に来るから弓香(娘)の言うことが大袈裟に感じてしまうけど、弓香の友達の理穂が「姑よりもまし」と言ったところで「ないわ~~」と思いました。
辛さは人それぞれだし、本人が辛いならそれは否定してはいけないのではないでしょうか。
母親になり親の気持ちが理解出来ることはあると思いますが、それでも弓香の母親がしたことはヒステリー女そのもので理解し難い。
理穂は自分に酔っていて、結局弓香にマウンティングしたかっただけなんじゃないかなぁと思ったりしました。
湊さんのインタビューを読んだ限りでは、「みんな毒親って言い過ぎじゃない? 酷くない?」って印象を受けました。湊さんは、理穂寄りなんだろうなと思うとつれぇ~~。
からしたら、弓香も理穂も無理ですわ。


まぁでも、今回も面白かったです!!!